コインランドリー店アワード2023、特別賞のご紹介です。
特別賞は「特定の分野において秀でている店舗に授与する」賞で、2023年は「もりやまランドリー」となりました。
もりやまランドリーは、秋田県南秋田郡五城目町東磯ノ目2-7-20に2022年の9月にオープンした、セブンイレブン五城目町役場前店と40台の駐車場を共有する南秋田郡(五城目町、八郎潟町、井川町、大潟村)面積450平方キロで唯一のコインランドリー。
この南秋田郡3町1村の人口は五城目町9,000人、八郎潟町5,700人、井川町4,600人、大潟村3100人の合計22,400人、面積は437平方キロの横浜市とほぼ同じ。
これだけコインランドリーのない地域ですから、当然、もりやまランドリーの開業は大きな話題となり、オープン時にはメディアの取材も多数あったそうです。
運営会社は五城目町でLPガス・灯油販売、ガソリンスタンド運営などを行う有限会社ワタナベ燃料(秋田県南秋田郡五城目町高崎里下80-4、018-852-3355)。
五城目町(ごじょうめまち)について触れますと、秋田県の西部、男鹿半島の付け根部分、冬のワカサギ釣りで有名な八郎潟調整池の隣に位置し、人口9,000人、面積215平方キロ。
週刊少年マガジンに連載された矢口高雄の大人気釣り漫画「釣りキチ三平」が2009年に実写映画化された際のロケ地で、撮影に使われた古民家「三平の家」がありましたが、2022年に惜しまれつつ解体。
現在は廃小学校を利用した施設「杉沢交流センター友愛館」内に家の一部を再現した「三平の家メモリアルルーム」にて当時を偲ぶことができます。
町のシンボルは「森山」で、標高325m。昔話に出てきそうな、子供に山の絵を描かせたらこんな感じになるだろうと思わせる、実に良い山並みの低山。
この森山の山並みは、もりやまランドリーのイメージイラストとして使われています。
また砂沢城跡に1983年、町のシンボルとして建設された観光施設「五城目城」。
城の4階に登れば町が見渡せるといいますから、わが町感タップリです。
観光名所は下タ町(したまち)通りで月に12回開催される十二斎市「五城目朝市」で、500年以上の伝統を誇る五城目町最大の観光スポット。
日曜日の開催日に開かれる「ごじょうめ朝市プラス」では雑貨なども販売され、活気にあふれています。
24時間年中無休で、AQUAのITランドリーシステムを導入しているためインターネット上から運転状況を見ることができます。
もりやまランドリー | コインランドリー総合サイト LAUNDRICH
構成は16Kg洗濯乾燥機が2台、10Kg洗濯乾燥機が3台、7kg洗濯機が1台、25kg乾燥機が2台、14Kg乾燥機が6台にスニーカーウォッシャー、スニーカー乾燥機にAQUAのマルチ端末ということで、おおよそどんなお店なのかイメージがつかめるでしょうか。
北は10Km、南は5Km、東は80Km走らないとコインランドリーがなかった当地に、超大型洗濯乾燥機にチャージできるICカード、インターネット接続された近代的なコインランドリーが出来たわけですから、五城目町の方々が喜びに湧いたのは想像に難くありません。
ところが、2023年7月14日からの大雨により、五城目町では床上399棟、床下200棟の計599棟、住家以外の建物493棟の合計1,092棟が浸水。もりやまランドリーも14日夜に近くを流れる馬場目川が氾濫し、この川の土砂を含んだ水が店を襲いました。
水没した翌日の写真がこちらです。
被災の翌日にようやく水が引き、店舗に近づけるようになったため見に行くと、店内は110cmの高さまで浸水、機器も水没して床やドラム内に土砂が蓄積。
その状況を見たワタナベ燃料の専務取締役・渡辺亮さんは、2022年にオープンした際の苦労や、オープン後に会社の女子社員が熱心に清掃したり、口下手にもかかわらずお客様に使い方などを教えているのを思い出し、絶望感に打ちひしがれ、思わず涙したそうです。
インフラは、電気は大丈夫だったのですが、水道はポンプ場が水没したため五城目町の9割の世帯で断水、非飲料水復旧まで10日、にごり水が解消して飲料可能水として復旧するまで2週間かかりました。
さっそくボランティアの方々と共にドロのかき出しをして、被災4日目には店内に人が安全に入れる状態に。
すでにその頃には、支援物資を配る拠点として機能していたそうなので、こういう時の人手って本当にありがたいですよね。
となりのセブンイレブン五城目町役場前店と40台の駐車場を共有するアクセス性の良さと、五城目町役場の目の前という立地から、もりやまランドリーはいつの間にか被災者の集まる場所に。
もちろん物資の支給という役割もありますが、「ともすれば情報不足や孤独になりがちな被災者の方々が集まって、情報交換やお互い励ましあえる場所になったのが何より嬉しく感じました。」(エントリーシートより)との言葉通り、コインランドリーが公民館的な場所になったのです。
そして、コインランドリーのたたみ台は布団ではなく支援物資で埋め尽くされました。
日本全国から送られた支援物資が種類別に整然と並べられた、もりやまランドリーのたたみ台。
コインランドリーのたたみ台は、広さ、高さともに抜群のユーティリティーを備えた、とても安定して使いやすい「テーブル」として機能しています。
よく見る会議室の折りたたみテーブルは、こんなに物を載せて使うのは想定していないから、こうはいかないんじゃないかなあ。
そして、自然と人が集まる場所となっていきます。
どうです、このにぎやかそうな写真。
美味しそうなパンや水、お茶、カップラーメン。
前述したとおり、飲料用水の復旧には2週間かかり、その間の飲料水は給水車のみが頼りでしたから、この時点でのペットポトルの水やお茶はとてもうれしかったのではないでしょうか。
そして、もりやまランドリーは被災から約2ヶ月後の2023年9月15日に再オープンしたのです。
エントリーシートの言葉の中に、コインランドリーが「災害から立ち上がる町のシンボル」「みんなを元気にする力がある」という言葉があり、そのストレートでシンプルだけど、とても力強い言葉に、胸を打たれました。
特別賞、本当におめでとうございます。
全機器水没という甚大な被害にも関わらず再びコインランドリー経営を選んでいただき、再建された事に敬意を表したいです。
もりやまランドリーを運営する有限会社ワタナベ燃料の専務取締役・渡辺亮さんにエントリーシートの内容の掲載許可を頂きましたので、ここにご紹介したいと思います。