さて、コインランドリー刑事の藤原も選考委員を務める世界で唯一のコインランドリー賞、第8回コインランドリー店アワード2023も残すところ店舗デザイン部門のご紹介のみとなりました。
店舗デザイン部門賞の定義は、「店舗外観・内装のデザイン性に特化した店舗」に授与される賞です。
この賞には、茨城県神栖市知手中央2-7-27に2023年2月23日(木)オープンした、「コインランドリーSHITTEアクアテラス」に決まりました。
運営会社は茨城県と千葉県を中心に15店舗を展開する有限会社谷川クリーニング。
現在の社長の谷川祐一さんは二代目。クリーニング屋さんですが、40年前にソニーが開発した経営者育成研修であるマネジメント研究(MG研修)のリアルセミナーを自社で開催したり、オンラインセミナーで企業の組織の作り方について講義するなど、本業以外でも経営指導に活発に動かれているのですが、その理由を調べてみると家業を継ぐのにとても苦労されたようで、その時の体験を元にセミナーなどを開いて同様の環境にいる方にとてもためになるお話をされていまして、特にこの記事はすごかったです。
店を覗けば店員不在、工場で挨拶すれば「うるせえ」の返事 老舗クリーニング店の2代目が、ホワイト企業大賞を獲るまで - ログミーBiz
祐一さんは初代の父との関係が最悪で、もともといた従業員の扱いも含めてすさまじい苦労をされており、この記事を読むと「家業を継ぐというよりも、よくみんなこんな環境で死人が出なかったなあ」という感想しかありません。
私も父に理不尽に殴られたり、父が母を殴ったり蹴ったりするのを見て、三ヶ月に一度は母が私や弟を連れて家を出て実家に帰り、父が連れ戻しに来る(もちろん怒ったまま来るのでこの時が本当に怖かった)という環境で育ったのですが、包丁はあってもさすがにナタで斬りつけられたりはしませんでしたねぇ。
革のベルトで打たれたことはあるのですが。
今思い出したのですが、小学3年あたりの頃、朝食の時に納豆をこぼしたところ父が急に怒り出し、とりえあずちゃぶ台をひっくり返し、グーでパンチ&キック。そして「納豆と言えば水戸黄門だ、水戸黄門のテーマ曲(ああ人生に涙あり)を歌え!いますぐ大声で歌え!」と激高してきたので、正座で泣きながら割れて粉々になった茶碗やごはん、味噌汁の中、大声でフルコーラス歌って、そのあと「歌詞の意味が分かるかァァァァ!」的な説教を受けた記憶があります。
アタマおかしいでしょう?
ちなみに父はこれでもヤクザではありません。ホンダライフに乗るフツーのサラリーマンでした。(なのでホンダも嫌い)
あとそろばん塾に通っていたのですが、帰ってきて3級の試験に落ちたと告げた際、無言で2往復ビンタして1週間口を聞いてくれなかったのは今考えると虐待ですよね。
無言でビンタするんですよ。まるでそろばん3級試験ごときに落ちたのが人殺し並に絶対悪であるかのような仕打ち。理由くらい言ったって良いでしょうが。
ちなみに父の口癖は、「おまえを産まなければ良かった。」です。
こんな家庭環境にもかかわらず、私が無差別殺人を起こさずに今まで生きてきたのは、奇跡としか言いようがありません。
私は父が癌で死ぬまで父を許すことはなく、もう数時間で命が尽きるという連絡を築地の病院の先生からもらった最後の日も死に目に会いたくないのでわざと遅れて行ったし。そんな私とはまったく反対に、祐一さんは父との関係改善に成功したのですから、本当にすごいなあ。
やはり何かをやり遂げる人というのは、根性が違います。
話が逸れましたが、コインランドリー刑事のこちらの店舗の選考理由は「コインランドリー付帯の枠を超えた極めて広く多目的に使えるフリースペースのデザインと机や椅子の機能が秀逸。また実際にイベントを頻繁に開催(参加者100人!)し地域コミュニティの基地となっている」です。
いったいどんな図面を引くとこんな店内になるのかとても不思議な、コインランドリーSHITTEアクアテラスの店内。壁面は機械ごとゆるい曲線に沿ってカーブしながら連続し、最終的には大きなL字を構成します。椅子やテーブルにも角が一切なく、すべてがマルく収まっており、注意書きなどの文字もほとんど見当たらないため非常にシンプルでクリーンな印象。
日本も多国籍人種のるつぼと化しており、特に工業地帯の多い地方では外国人労働者の増加からその比率は増していますが、こうして見ると多言語に対応するより、むしろテキストレスにして視覚に訴えたほうが良いのかなあ。
非言語コミュニケーション、ノンバーバル・コミュニケーション(nonverbal communication)ともいう言葉があるのですが、母国語が違う者同士が理解し合うには意外と身振り手振りが効果的なんですよね。
機械の使い方やマナー、ルールなども、徹底的にキレイにしておいて、「これがノーマル状態である」と認識させ、機械の使い方なども最初に押すスイッチを目立たせることで直感的に分かるようにする、などの工夫をすれば、外国人でもスムーズに利用できるかもしれません。
おそらく施工にとても苦労したと思われる、別棟の多目的フリースペース。無垢の木のあたたかみが醸し出す優しい雰囲気のなか、劇場的な使用も出来る円形のホールと、通常時は邪魔にならない場所に重ねておき、イベント開催時に椅子やテーブルとして使うことのできる木製の「ハコ」や、ディズニーランドやジブリパークにありそうなデザインのドアノブなどがとてもユニークです。
前述したとおり、谷川クリーニングさんはとてもイベント好きで、実際にこの場所でもチラシ配布で告知しただけのハロウィンイベントに100人以上が集まったそうです。
多目的スペースと同棟のクリーニング店部分も、言われなければ病院の受付のような雰囲気です。
完全に従来のクリーニング店のイメージからの脱却を目指していると思われます。
その「やり遂げる」心意気たるや、デザインの優しさとは裏腹に鬼気迫るものを感じます。
実際、谷川さんによれば、あまりにも複雑な設計にここでは書けないほどの深刻なトラブルが発生し、完成までの道のりは平坦ではなかったそうで、それでこの完成度ですから実際に谷川さんらがイメージした施工パースははるかに夢物語だったのではないでしょうか。
私の言葉よりも、谷川さんの書かれたエントリーシートのほうがこちらのお店についてよく分かると思いますので、転載させていただきます。
受賞、本当におめでとうございます。