コインランドリー刑事の独り言

クリスマスの思ひで・・・の巻

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この時期になると、毎年必ず思いだすことがあります。
特にこの時期特有の、赤紫の夕焼けが見える時間帯。
思い出すのはスバルサンバー、黒のアウディA6、早稲田の坂、父、病院。
東日本大震災の前の年の暮れ、父は末期がんで築地あたりの病院に入院していました。
ほぼ毎日国立市から通って身の回りの世話をしていた私と、そんなわたしの代わりに一生懸命働いていた妻。
父は仕事で忙しい妻が見舞いにこないのを怒り出し、「来い」といいます。
妻が当時働いていた商店街の八百屋さんの車を借りて、築地に行きました。
その病院はキリスト教系の病院で、緩和ケアでは都内、いや国内でも指折りの名病院でして、院内のBGMにクリスマスの音楽がかかってます。
もちろん楽しげなヤツではなくて、確か「ホワイトクリスマス」みたいなしっとりしたのが歌なしでかかってたような気がします。
一度も入らなかったけど、院内には礼拝堂もありました。
父は忙しい中、やっと時間を作って見舞いに来た妻にありがとうを言うわけでもなく、むしろ来なかったことを謝れ、という感じでした。
わたしも妻も、なんだか二人とも言葉にできないどんよりとした空気になり、いろいろな意味で疲れたのですが、せっかく来たので帰りに父のマンションの様子を見てから帰ろうと思い、高田馬場だったので帰り道は早稲田通りから善福寺経由で帰ろうと思いました。
いつものように大久保通りを国立国際医療センターの角を曲がり、戸山公園の横を通りガソリンスタンドがあるT字路を左に曲がって諏訪通りに出ました。
ここは公園と早稲田大学のところが窪地になっていて、ここから明治通りまでは急な上り坂が続きます。
ところが、八百屋さんから借りたスバルサンバーはその急な坂をちっとも登ろうとしないんです。
荷物は積んでないし、乗ってるのは私と妻だけ。二人とも体重は平均並みです。
1速フルスロットルでも、自転車並みのスビードしか出ません。
すると、後ろを走っていた車がクラクションを執拗に鳴らし始めました。
あわてて路肩に寄せて、その車を追い抜かせましたが、その間じゅうずーっと鳴らしっぱなし。
エンブレムには「Audi A6」と書いてました。
借りておいて言うのもなんですが、このボロ車と見舞いの件が重なって、なんだかとてもみじめな思いになり、二人して暖房がほとんど効かなくて寒いサンバーの中で泣きました。
自殺する人ってこんな気持ちになるのかなあ。
時に、他人にとっては何でもない事でも、当人にとってはとても辛い想いをすることもあるのかなあ、とか考えて、人と接するときはなるだけ優しくしよう、と思ったりする夕暮れなのです。

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